happy halloween V













ザトーの部屋から出て数十分。。




ヴェノムとエディが次に向かった先は。






「…やっぱりここに来ちゃうんだなぁ」

部屋の扉の前に立ち、はぁ…と溜め息をつく。
この姿を見たら笑われるかな、と 少し気乗りしないヴェノム。

でもこれもエディとザトーの為。

「ココ、みりあノ部屋カ?」
「そうだよ。ミリア、今部屋にいるかな…」
そう言って扉を軽くノックする。




「…。」





「…。イナイ?」


反応が無い。


「居るはずだと思うんだけど…気配も物音もするし」

「しかとシチャッテルノカナ?…アレ………う゛ぇのむ、ナンカ臭ワナイカ?」
「う…、そういえばコゲ臭い」

もしや…と思い、ヴェノムはそっと扉を開けてみる。ちなみに組織の中で、
ある程度地位がある人間には1人に1つ部屋が割り当てられている。

その部屋には簡素ではあるがキッチンが取り付けられており、今そのキッチンから黒い煙がもうもうと上がっている。

「狼煙デモ上ゲテルノカ?」
「いやそれは絶対ない。」

ヴェノムはエディの天然ボケにすぱっとツッコミを放った後、恐る恐る煙が上がっている方へと歩を進めた。

「…ミリア?」

そーっとキッチンに顔を覗かせると、黒い煙の間から見慣れた金の髪の毛が見えた。

「けほっ!あ〜あ、また失敗しちゃった…。やっぱり難しいわね」
「…何の実験?」
「あっ?ヴェノム…なぁにそのカッコ。エディも」
「君こそ何だその…エプロンなんかして」


ミリアの手には得体の知れないコゲコゲの物体が乗ったフライパン。
煙はそこから上がっているようだ。そして彼女に似合いそうな、真っ黒いシンプルなエプロン。


「やぁね、このカッコ見たら料理に決まってるでしょ?」
「お言葉だが私には何かの実験に見えた。」
「失っ礼ね!作ったら食べさせてあげようと思ってたけど、もうヴェノムにはあげないっ」

「いらんて」
「エディちゃんにはあげるからね〜」
「ワ〜イ!」

「ちょっ…ミリア、エディにそんな変な物食べさせないで…」
「失敗したのを食べさせるわけないでしょ。今作り直してあげるから待ってて」





ミリアはヴェノムにはあげないと言っていたが、ちゃんと3人分用意してくれたようだ。
真っ白なクロスがかけられた円形のテーブルの上には3枚の皿。それと3組のナイフとフォーク。



テーブルに座って待っていると、ミリアが大きめの皿を持って戻って来た。



「2人ともお待たせ。遠慮なく食べてね」

皿の上に乗った、狐…いや狸色に焼けた薄いクレープのような食べ物。

「ヴェノム〜、コレ何ダ?」
「これはブリヌィって言って、ロシア風クレープって言えば分かりやすいかな…。そういえば昔からミリアがよく作ってたな。」
「よく覚えてたわね。私が作っても、ヴェノムは食べてくれなかったじゃない」
「だってクレープに魚卵とか生ものが入ってるから…」

「フ〜ン。ソレヨリ、コレドウヤッテ食ベルンダ?」
ミリアとヴェノムの会話を尻目に、エディがブリヌィを小さな指でつんつんと突いている。

早く食べたそうなエディに気づいたミリアが、それを破れないようにそっと手に取った。

「クレープみたいに具をくるんで食べるのよ。
ご飯として食べるならイクラやサーモンとかお肉ね。2人はデザート用として作ったから、
キャラメルと煮詰めたりんごが入ってるわ。ジャムを入れても美味しいわよ」

どうぞ、と先ほどミリアが巻いていたブリヌィを皿に乗せ、2人の前へ出す。

ブリヌィは自分達がよく見るクレープのようにゆったりと包むような巻き方ではなく、筒状にきっちりと細長く巻いてある。



「イタダキマス〜!」

はもはもと美味しそうに頬張るエディを微笑ましそうに見ていたヴェノムも、ナイフを使ってブリヌィを切り分けて口に運ぶ。



程よく酸味が残ったりんごと、とろっとした甘いキャラメルが絡んで美味しい。

生地にサワークリームが混ぜてあるらしく、甘すぎない所もヴェノム好みで。

咀嚼しながら飲み込むと、ふわりとシナモンの香りが口に残った。


「へぇ、食べたことはなかったけど本当にクレープみたいなんだな」
紅茶が欲しくなるな、とヴェノム思う。

「でしょ?美味しいんだから。そういえ ば聞きそびれたけど、2人ともその格好…ハロウィーンかしら?」
「オウ!ソウダゾ〜!う゛ぇのむト2人デ、オ菓子貰イニ回ッテルンダ〜」

口のまわりをキャラメルだらけにしながら、きゃっきゃと嬉しそうに話すエディ。
それをヴェノムが紙ナプキンで口を拭いてやる。



「みりあモ一緒ニ行クカ?」
「ふふ、楽しそうね。でも私は片付けなきゃいけない仕事があるから…」

ちょっと残念そうに、肩を竦ませて笑うミリア。


「それにしても可愛い格好してるわねぇ、ヴェノム。ザトーの趣味かしら?」


改めてまじまじとヴェノムの格好を眺めるミリア。その視線は主にスリットから 覗く脚に注がれている。



「…代わってあげたいよ…」
「ザトーが喜んでるなら貴方も本望でしょ。それじゃ、私はこれから仕事片付けなきゃいけないから他を回るといいわ」
「オウ!くれーぷアリガトナ!美味カッタゾ〜」
「ううん、いいの。久しぶりに誰かと食事ができて嬉しかったわ」

そう言ったミリアの表情は本当に嬉しそうで。
それにつられてヴェノムの顔も緩む。




「それじゃ、またね」
「マタナ〜、みりあ〜」
「仕事頑張ってな。これ、ありがとう…」
「いいのよ。…行ってらっしゃい」


ミリアに見送られて部屋を後にする2人。

そのバケツの中には少し大きめに1切れ、オレンジ色のセロファンに包まれたケーキが入っていた。

「もう十分ご馳走になったのに…」
「う゛ぇのむう゛ぇのむ〜、コレモみりあノ国ノオ菓子カ?」
「そうだよ。メドヴィークって言って、固めに焼いたスポンジの間に蜂蜜とバターを練ったのを挟んだ物なんだ」


でもこう見ると、あんまり固めに焼けなかったようだ。蜂蜜を吸ってふにゃりとしたスポンジが型崩れしている…。

そこをミリアらしいと思えばミリアらしいが…。




「う゛ぇのむ、次ハドコ行コッカ?」
「そうだな…、それじゃ組織の外に出て回ってみる?」
「イイナソレ!う゛ぇのむのトモダチノ所トカニ、えでぃ連テッテナ〜!」
「わかった。じゃあ行こう」



どこに連れて行ってくれるのか?エディはうきうきしながらヴェノムに抱かれ、 次の場所へ。


















いきなり終わらせた感がありますが、そこは突っ込まないでください;
ブリヌィは別にキッチリ巻かなくてもいいらしいですが、なんかきちっと巻いてる写真をよく見るのでそれで。(笑)
それと魚卵と聞いてミリア味オンチ?と思いがちですがロシアクレープは文章にもある通り、
生地にサワークリームが混ざってるので生ものを包んでもイケるようです。
補足が続きますがブリヌィを焼くのは現地の方でも難しいようで、諺にも使われているほどとか。
多分、ミリちゃんは幼少から練習し続けてなんとか(狸色にまで)モノにしたのでは…w


メドヴィーク食いたいなぁ…ハチミツ個人的に大好きなんでw
それにしても次から誰にしよう…う〜ん;(実はまだ決まってなかったり;)




どうでもいいけど、相方に「お前のトコのヴェノムは反抗期じゃなくて情緒不安定だな」
と突っ込まれました;

成る程…それは単に口調が定まってないだけなのでは…;いやでも憎ったらしいかも…



というかエディの前では優しいだけですから!!w









 マエ。  モドル。