happy halloween T
閉じられたドアの前に黒い影が一匹。
背伸びしても届かないドアノブに、ぴょいと飛び跳ねてノブにしがみつく。
しがみついた重みでドアノブが下がり、かちゃりと静かな音を立てて扉が僅かだが開いた。
地面に着地して扉のすき間に体をするりと通し、部屋の中へ。扉は手間に引かなくては閉まらないので、
お行儀は悪いけどそのまま開きっぱなし。
影は何を探しているのか、部屋の中をてちてちと歩き回る。…と目的の物を見付けたようだ。
部屋の角に天蓋つきの豪奢なベッド。
その中のシーツに膨らみを確認すると、寝台に駆け寄り、声を掛ける。
「う゛ぇのむ〜、オ寝坊サン!」
ベッドによじ登ると、小さな手でシーツをゆさゆさと揺さぶる。
小さな揺れだが、シーツの中の人物は気配に気付いたのか、目を覚ましたようだ。
「ん…なぁに、エディちゃん…。一緒に寝たいの?」
もそもそとシーツが動き、中から銀色の髪をした青年が眠たそうに顔を覗かせた
。
「チガウチガウ〜!今日ハえでぃ、オ菓子モライニ来タンダ〜」
ぱたぱたと手を降り、拒否を表す。
お菓子…?と怪訝そうな顔をしたヴェノムは 、目を擦りながら改めてエディを見やった。
黒くちっちゃなとんがり帽子に同じくちっちゃなマントを羽織っている。そして手にはカボチャの形をした、
エディには少し大きめのバケツ。
「あぁ、今日はハロウィンかぁ…」
「ソウ!う゛ぇのむ、オ菓子チョウダイ〜。クレナイトいたずらシチャウゾ〜」
きゃっきゃとはしゃぎながらシーツの中のヴェノムにじゃれつくが、じゃれつかれてるヴェノムの顔は
曇ったまま。
「う〜ん…お菓子か」
お菓子と言われても今日の行事を全く覚えていなかった為、もちろん用意などしていない。
それにあまり甘い物を食べないヴェノムの部屋に菓子が常備してある訳でもなく、
かといってエディにイタズラされては部屋が目茶苦茶に荒らされてしまう。せっかく部屋に来てもらって、
お菓子をあげないのも可哀相だ。
「…困ったな…」
ばつが悪そうに頭を掻いているヴェノムに、察したエディは少々落ち込み気味で。
「う゛ぇのむ…、オ菓子ナイノカ?えでぃオ菓子モラエナイ…?」
まだ空っぽのままのバケツを見ながら、しゅんとしてしまうエディ。どうやら1番に
ヴェノムの所へ来てくれたようだ。それが余計に心に痛い。
「あ、いやエディ…!えっと」
「ジャアざとーノ所に一緒ニ来テ」
「え。」
「う゛ぇのむニオ菓子貰エナカッタラ、ざとーノ所ニ来イッテ」
「言ってたの?ザトー様が?」
「ソウ。」
もしかしてイタズラするのはザトー…?だとしたら悪戯じゃ済まない上に
逆に自分がお菓子にされてしまうのでは…。
怪しさがぷんぷんする上にどうも確信犯臭い。このままザトーの元へ行ってもいいものか…。
しかしエディを前に断る事も出来ず
「…わかった。じゃあ行こう、エディ。」
「ウン!」
軽く身仕度をして、一抹の不安を抱き、部屋を出たヴェノム。
エディを抱っこしながら、ザトーの部屋に行くまでの2人の会話に、
"ごめんね"と"イイノ"の言葉が何回も行き交わったのは言うまでもない。
とりあえずプロローグ。
原作のエディとかけ離れてるけど、ウチのエディちゃんはこんなんです。
ヴェノムとエディがこんなに仲良しなサイトもそうそうないであろうなぁ…アハハ;
ちなみに時間帯は夕方なのですが、ヴェノムは仕事明けでずーっと寝てたオチ。
ここまでフライングする程、私はハロウィーンが大好きなのサ。(笑)
モドル。 ツギ。